【焼肉部位解説】焼肉の王道「タン」— 味わいの秘密と歴史、そして極上の食べ方とは?
- yakinikunandaimon1
- 7 日前
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焼肉と聞いて、まず思い浮かべる部位といえば「タン」ではないでしょうか?そのサクサクコリコリフワフワとした独特の食感と、噛むほどにあふれる旨みで多くの焼肉ファンを虜にしている牛タン。実は、その美味しさの裏には意外と知られていない「部位の違い」や「歴史的背景」、そして「食べ方の工夫」が隠されています。今回は、そんな牛タンについて深掘りしてみましょう。
▼タンとは?— 舌の部位が持つ奥深い世界
牛タンとは、読んで字のごとく「牛の舌」の部位。全長は約40〜50cmにもおよび、部位によって味わいと食感が大きく異なります。大きく3つに分類されます。
1. タン元(たんもと)
舌の付け根部分。白く脂が乗っていて柔らかく、最上級のタンとして扱われます。いわゆる「上タン」や「特上タン」と呼ばれるのはこの部位。炭火で炙ると、口の中でとろけるような旨みが広がります。
2. タン中(たんなか)
舌の中央部分で、脂と赤身のバランスが良い万能選手。適度な噛みごたえと風味があり、多くの焼肉店で定番の「並タン」として提供されています。
3. タン先(たんさき)
舌の先端で、筋繊維がしっかりしており食感が強め。そのため、煮込みやタンシチューなどの調理に向いています。
▼牛タンのルーツと歴史 〜仙台から世界へ、B級グルメの奇跡〜
現在では焼肉の定番メニューとして親しまれている「牛タン」ですが、実はそのルーツは戦後の混乱期に遡ります。
ー戦後の仙台と「捨てられていた部位」
1945年、第二次世界大戦終結後、日本はGHQの占領下に置かれ、多くの地域で物資が不足していました。仙台も例外ではなく、満足に食べ物を手に入れるのが難しい時代。そんな中、アメリカ進駐軍によって多くの牛肉がもたらされました。
当時、進駐軍の食用として供給された牛肉は、ステーキやロース、ヒレなどの「高級部位」ばかりが消費されていましたが、内臓や舌などの「副産物」はほとんど見向きもされず廃棄されていたのです。
この“未利用資源”に目をつけたのが、仙台で洋食店「太助(たすけ)」を営んでいた料理人・佐野啓四郎氏です。
ー「炭火で焼いた牛タン」が仙台で誕生
佐野氏は、捨てられていた牛の舌(タン)を、塩で下味をつけて炭火で炙るという独自の調理法で提供を始めました。これが、現在の「牛タン焼き」の原型です。
当初、舌を食べるという文化は日本では一般的ではなく、抵抗感を持つ人も多かったものの、その香ばしく、ジューシーな味わいが次第に口コミで広がり、人気メニューに成長していきました。
佐野氏の「太助」は、のちに「仙台牛タン焼き発祥の店」として知られるようになり、彼の創意工夫は、焼肉文化に新たな流れをもたらしました。
ー牛タン文化の全国展開とインバウンド人気
1970年代以降、東北新幹線の開業や観光ブームと共に、仙台名物としての「牛タン焼き」が全国に知られるようになります。特に厚切りのタンを炭火で焼き、麦飯ととろろ、テールスープを添えるというスタイルは、「仙台牛タン定食」として定着。家庭用のレトルトや冷凍食品としても流通し、外食チェーンにも導入されるようになりました。
さらに2000年代以降、訪日外国人観光客(インバウンド)の増加とともに「Gyutan(牛タン)」はグローバルな知名度を獲得。特に韓国、台湾、香港、東南アジア圏の旅行者にとって「日本で絶対に食べたい料理」のひとつに挙げられることも少なくありません。
ー牛タンが象徴する「B級グルメの進化」
牛タンの歴史は、いわば「食材の再発見」と「料理人の工夫」が生んだ、日本のB級グルメ文化の象徴と言えるでしょう。もともと評価されていなかった部位に光を当て、絶品料理として昇華させたその過程は、飲食業における地域資源活用や地方発グルメの成功例として、今なお語り継がれています。
▼おいしい牛タンの選び方と焼き方
選び方
色が鮮やかで光沢があるもの:新鮮な証拠
程よく脂がのっているもの:特にタン元は霜降りに注目
厚切りか薄切りかで食感が変わる:好みに合わせて選びましょう
焼き方のポイント
表面をさっと炙るのが基本。焼きすぎると硬くなってしまうので注意。
厚切りタンの場合は、表面をしっかり焼いて旨味を閉じ込めるように。
レモンとの相性は抜群。脂の甘さを引き立てつつ、さっぱりと食べられます。
▼タンのアレンジ料理
焼肉以外でも牛タンは大活躍。以下のような料理で楽しむのもおすすめです。
タンシチュー:じっくり煮込んだタンは、ナイフがいらないほど柔らかくなります。
ゆでタン:塩で茹でたタンは素材の旨味がダイレクトに味わえます。
ネギ塩タン丼:焼いたタンを白ご飯にのせ、ネギ塩ダレをかければ至福の一杯に。
▼まとめ:タンは奥が深い!
牛タンは、ただの焼肉の一部ではありません。部位による味わいの違いや、歴史、そして調理方法によって無限の可能性を秘めています。ぜひ次に焼肉屋でタンを注文する際は、「どの部位のタンか?」に注目してみてください。きっと、今までとは一味違う焼肉体験が待っているはずです。